ルカシェンコ大統領って誰?
最近ニュースでよく聞くルカシェンコ大統領。一体何者?何が問題?困ったときは元CIA工作員のGlenn Carle氏。彼の考えを探りましょう。
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8月9日、自由で公正には程遠い選挙により、6度目の大統領当選を決めたベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領。彼は革命を生む要因について深く考えたことがないのだろう。
この独裁者の目には、政治は実に単純に見えているようだ。自らの権威にわずかでも抵抗するものは片っ端から叩き潰す。それを徹底すれば万事うまくいくと思っているらしい。これは、20世紀の共産主義指導者をはじめ、独裁者の常とう手段だ。
だが、ルカシェンコにとっての古き良き時代はもう終わったのかもしれない。
前世紀末に東欧の共産主義国家の指導者たちが思い知らされたように、革命を突き動かす力を国家が完全に抑え込むことはできない。いま世界は激しいストレスと変化の中にある。世界中の多くの人々が様々な問題に抗議するために街頭デモもを行い、政府は激しい重圧にさらされている。ベラルーシでルカシェンコ退陣を求められたのも、過去30年間で最大規模のデモが行われたのも、こうした世界的な潮流の一環とみなせるだろう。盤石だったルカシェンコの世界に亀裂が走り始めたといえそうだ。
1848年、ヨーロッパが革命の波に飲み込まれたことがあった。ヨーロッパの多くの国で行かれる民衆が立ち上がり、より国民の声を反映し、より抑圧の少ない政治を要求したのだ。
都市化、工業化、教育、ナショナリズムといった要因がこの動きに拍車をかけたことはよく知られている通りだ。しかし、同時代の人々は、民衆を蜂起へと突き動かした最大の要因に気付いていなかった。その前の数年間、ヨーロッパでは大量の雨に見舞われていた。アイルランドではそれが原因で「ジャガイモ飢饉」が起きて、人口の12%が餓死し、13%が国外への移住を余儀なくされた。他の国々でも、天候不良により農作物の不作と飢饉が深刻化した。
これは、ヨーロッパ全土に革命が広がる引き金になった。最終的に、フランスを別にすれば民衆の蜂起は鎮圧された。それでも雨が既存の体制への反発を増幅させ、その後の歴史の流れに大きな影響を与えたことに間違いない。
新型コロナウイルスは、この現象の今日版になるかもしれない。ルカシェンコは、アメリカのトランプ大統領やブラジルのボルソナロ大統領などと同様、この感染症の脅威を軽んじている。ルカシェンコが推奨するコロナ対策は ①ウオッカを飲む ②サウナに行く ③トラクターを運転するといったものだ。ベラルーシでは新型コロナウイルスの感染率がヨーロッパで有数の高さに達しているのだが。
そのうえ、いまベラルーシの国民は深刻な経済危機に苦しめられている。2020年のGDPの予測値は4%減だ。しかも、この30年間で欧米との交流が深まったことで、国民が抱く社会的・政治的期待も昔より大きくなった。
ルカシェンコは大統領選で勝利を収めて以降、ますます悪質な行動を取るようになっている。選挙後の3日間で約6000人が拘束され、姿を消したままの人も大勢いる。大統領選で対抗馬だった人物は、国外に脱出せざるを得なくなった。しかし、こうした抑圧的な措置は、崩壊寸前の東欧の共産主義国家を連想させる。
新型コロナウイルスが触接ルカシェンコを失脚させることはないかもしれないが、コロナ渦によるストレスは独裁体制の寿命を縮めるだろう。もしそうなれば、新型コロナウイルス危機がもたらした数少ない明るい材料と言えるかもしれない。
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