ファーウェイは中国政府の手先か
ニュースでこの会社を聞かない日はありませんね。ファーウェイ。ファーウェイのスマホを持っている人も多いでしょう。安くてデザインも悪くない。ただ中国製である。何かやばそう。ちょっくら、ファーウェイについて、キース・ジョンソンとエリアス・グロール(フォーリンポリシー誌)の論稿で勉強してみましょう。
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スウェーデンの通信大手テリアソネラ(現テリア)が、北欧の複数の都市で世界初の第4世代(4G)の移動通信システムの構築に乗り出したのは09年のこと。ノルウェーのオスロでその大役を任されたのは中国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)だった。それはなんとも大胆で意外な選択だった。当時の同社は、まだ中国国内と一部の新興市場を除けば無名に近い存在だったから。
同じ年、ファーウェイはノルウェー全体の移動通信網の再構築というもっと大きな契約も獲得した。従来のシステムを手掛けたのは世界に冠たるエリクソン(スウェーデン)とノキア(フィンランド)だった。この大仕事をファーウェイは予算の範囲内で、しかも納期より早く完成させた。
それはファーウェイが移動通信の業界で世界レベルに躍り出た瞬間だ。同社はもはや、ダンピングや技術泥棒でシェアを奪おうとする新興企業ではなかった。最先端の独自技術を武器に、欧州の大手企業を彼らの縄張りから押しのける存在になっていた。
「人々はこの時初めて、ファーウェイを安かろう悪かろうの会社ではなく、品質でも価格でも勝負できる企業と認識した」。そう語るのはフィッチ・ソルーションズの通信アナリスト、デクスター・シリエンだ。
それから10年もたたないうちに、中国政府から数十億ドル相当の支援を受けたと言われるが、ともかく同社は通信機器の世界最大手へと成長した。昨年は170か国で約1057億ドルの事業収入を計上している。
それだけではない。同社は5Gの開発で世界の先頭を走っている。通信システムは電子メールに始まり、ウェブサイトの閲覧を経て動画のストリーミング配信へと進化してきたが、5Gはデータの容量でも速度でもけた違いで世界経済を完全に変えるほど革新的な技術だ。もしもファーウェイが順調に歩み続ければ、21世紀の世界を制するのはアメリカではなく中国ということになりかねない。
それまで先進国の独壇場だった市場へのファーウェイの進出は、業界のみならず欧米諸国の政府にも衝撃を与えている。そしてこの成功によって、同社はドナルド・トランプアメリカ大統領から標的にされている。トランプ政権はこのままファーウェイが勝ち続ければ、中国が世界の通信網を支配でき、いくらでもスパイ行為や知的財産の侵害を行えるようになると考えている。今や「5Gは地政学的な戦場だ」というのは、スウェーデン国際問題研究所のティム・ルーリヒだ。
ここで気になるのは、ファーウェイは「普通の」会社か中国政府の手先かという問題だ。同社を87年に設立したのは、かつて人民解放軍の工兵隊に所属していた任正非(レイチョンフェイ)だ。そして人民解放軍は、同社の創業当初からの主要な取引先の一つでもある。
去る3月下旬にはイギリス政府の5G検討委員会が報告書を発表し、この会社はハイテク版トロイの木馬かもしれないと指摘した。同社のシステムにはハッカーの侵入を許す「隠れた欠陥」があり、セキュリティ上の重大な問題を引き起こしかねないというのだ。ただし基本的には技術上の問題を指摘するにとどまり、中国当局の指示で意図的に仕組まれたことを示す証拠はないとし、同社製品の完全な排除までは進言していない(2019・5月現在)。
こうした懸念の裏には単純な疑問がある。ベーシックな通信機器の輸入から始めた無名の民間企業が、わずか30年で5Gという最先端の通信技術で支配的な地位を築くところまで到達できたのはなぜか、という疑問だ。
残念ながら簡単に説明することはできない。むろんコスト面で有利な点はあった。政府からの援助や保護、巨大な国内市場の存在も、短期間での急速な成長につながった。創業者の任が人民解放軍の出身で、同社の最初の顧客が人民解放軍だったことも単なる偶然ではあるまい。
だが詰まるところ、同社の急成長は多くの政策や決定が複雑に絡み合った結果というしかなく、欧米のライバル勢の失態に助けられた面もある。
同社が創業時から国の支援を受けていたのは事実だ。しかしどの程度のものだったかを正確に数値化するのは難しい。民間企業と中国政府の関係も分かりづらい。
同社は複雑な従業員持株制度を採用する非上場企業なので、上場企業ほど詳細な財務報告の義務はない。だが欧州委員会の調査によると、ファーウェイは中国の国家開発銀行から300億ドルもの与信枠を得ていたし、絶妙のタイミングで融資を受けてもいた。
ファーウェイは国からの直接的な資金援助を否定しているが、政府の産業政策に助けられたことは率直に認めている。任自身、国内企業の優遇策がなければファーウェイはつぶれていたと語っている。
中国政府からどんな支援があったにせよ、同社をここまでの大企業に育てたのは創業者兼CEOの任のビジョンと壮大な野心だ。
①39歳で軍隊を辞め②国有企業に4年間勤務した後③国有銀行から850万ドルの融資を受け④14人のスタッフでファーウェイを創業したという。
最初に手掛けたのは伝統的な通信網の基幹技術である電話交換機の輸入販売だった。そして91年には自前のデジタル交換機の開発に着手した。当時の中国の電気通信業界では外資系企業と提携するのが普通だったが、任はあえて自社開発にこだわり、研究開発部門に集中的に投資した。
同社の経営を研究したアナリストによると、90年代前半の同社の研究開発スタッフは500人で、生産部門で働く200人よりもずっと多かった。おかげて93年までには新型の交換機を完成させ、人民解放軍に納入し、独自の通信ネットワークを提供した。これで同社はライバル勢よりも有利な地位を手に入れた。
その1年後、任は別の形で国からの保護を確保することに成功した。共産党の総書記だった江沢民と会談し、国内に電話交換産業のない国は軍隊のない国に等しいと進言した。任によれば、江は「よく言ってくれた」と答えたという。その後、中国政府は96年までに国内の電気通信会社を支援する方向に産業政策をシフトさせ、外国の競争相手を締め出した。
それからのファーウェイは、まず国内市場の制圧に力を注いだ。狙ったのは地方政府、とりわけ農村部だ。同社は競合他社を排除するために製品を格安で販売し、時にはシステムの運用を無料で支援した。98年までに、同社は最大のライバルだった上海ベル(外資との合弁事業)と市場シェアで肩を並べるところまできた。
国内市場で優位を確立するにつれ、同社は海外市場でも製品を格安で販売し、頭角を現した。ファーウェイは価格競争でライバル勢を大きく上回っていた。欧米勢より低賃金でも喜んで働く有能なエンジニアをたくさん抱えていたからだ。
今日(2019年5月現在)、ファーウェイは世界の通信機器の29%を支配している。市場調査会社デローログループによると、アジア太平洋地域でのシェアは43%、ラテンアメリカでは34%だ。
200年代初めに、シスコシステムズからルーター用のソフトウェアを盗み出すなど、過去のファーウェイに産業スパイの汚点があるのは事実だ。しかし専門家の見るところ、任は創業当初からファーウェイを研究開発に強い会社に育てようと努めてきた。
「あの会社の技術水準は、たくさんの優れた人材によって支えられている」と言うのは、テレコム業界のコンサルティング企業シグナルズリサーチグループの創設者で業界事情に詳しいマイク・セランダー。「ファーウェイの悪口はいくらでも言える。しかし、あの会社を切って捨てるのは大きな間違いだ」
非上場企業だからこそファーウェイは研究開発に自由に資金を投入でき、その額は年間150億ドルから200億ドルに及ぶと任は言う。ファーウェイでは従業員のほぼ半分に当たる8万人が研究開発に専念している。
また米FCC(連邦通信委員会)の元ファーウェイは技術責任者ヘニング・シュルリンネによれば、研究成果を製品に結び付ける能力でもアメリカのハイテク企業に匹敵する。
きょうはここまで。ファーウェイの歴史を見ると、現在の地位は単なるカネの力ではないことが分かってきますね、控えめに言って、強敵。
ファーウェイの研究部門は「製品開発プロセスにうまく統合されている」ので、研究結果がすぐに売り上げにつながるらしい。
またファーウェイは垂直統合型の会社で、基幹部品から消費者向けの端末までを自社で手掛けている。主な競合企業であるエリクソンやノキアと異なり、ファーウェイはインターネット経済に必要なスマートフォンを含め、5G関連技術のすべての要素を自前で揃えている。
スマートフォンの製造会社としては韓国のサムスンに次ぐ世界第二位だ。専門家に言わせると、高性能なチップセットからヘッドホンまでを自社生産できるファーウェイは、5Gの恩恵をいち早く消費者に届けるうえで有利な立場にある。
5G関連の画期的な技術開発では、どの企業もファーウェイにはかなわない。5Gの通信設備についても、同社は既に低周波数帯(受信可能範囲が広い)と高周波数帯(データ転送が速い)の両面で実証実験を重ねている。
今年に入って、同社は5Gを可能にする初めての自社設計のチップセットとデバイスを発表した。ファーウェイによれば現在(2019年5月)、世界中で5Gネットワークを構築する契約を40件ほど締結しており、さらに数十の国が契約を検討している状態にある。
中国企業が電話、電子メール、商取引などの膨大な量のデータを世界中に流すネットワークを構築するにつれ、アメリカ政府当局内では通信インフラがスパイ活動に悪用されるのではないかとの懸念が高まっている。
このままだとアメリカは、世界一の情報大国の座を中国に奪われかねないし、仮にも中国製ネットワークへのアクセスを妨害あるいは傍受されるような事態になれば、貿易はストップするし、軍事行動にも重大な支障が出るだろう。
何十年もの間、アメリカの諜報機関は世界の電気通信ネットワークにおけるアメリカ企業の中心的役割を利用して敵を監視し、優れて秘密性の高い情報を収集してきた。
しかし今、単なる偶然か巧妙な策略かは別として、中国がアメリカを蹴落として世界の通信網を支配する可能性がある。アメリカの場合、ソフトウェア系の企業は強いけれど、5Gの通信インフラを物理的に構築する上で抜きんでた企業は存在しないからだ。
「中国政府の選択肢は二つ。①かつてのアメリカのように巨費を投じて諜報ネットワークを構築するか、②それともファーウェイに任せるか。もちろん後者のほうが安上がりだ」言うのは、米戦略国際問題研究所の技術政策部門を率いるジュームズ・ルイスだ。
国家情報長官のダニエル・コーツも年次報告書「世界の脅威評価」で、最先端のの通信ネットワークが外国製品では「アメリカの競争力と情報セキュリティの維持が困難になる」し、そうした通信網にアメリカのデータが載るようになれば「外部の者に盗み見られたり、アクセスを拒否されるリスク」が高まると指摘している。
きょうはここまで。中国製品の「安かろう悪かろう」はもはや過去の話ということが分かってきました。アメリカが本気で戦わなければならない相手、それが中国。続きはまた明日。
こうした不安から、アメリカ政府は国内でのファーウェイ製品仕様を実質的に禁止した。一方で司法省は昨年末、同社最高財務責任者で創業者の長女でもある孟晩舟(モウワンチョウ)の逮捕を命じた。容疑は①アメリカの技術を盗もうとしたことと、②イランでの業務について偽ったことだ。現在彼女はカナダにいて、米当局への身柄引き渡しに抵抗している。
しかし、同盟国を巻き込んでファーウェイ包囲網を築こうとするアメリカの試みが成功する見込みは薄い。既にファーウェイには世界中で無線通信網を構築してきた実績があり、5Gについても同社の技術が世界標準になろうという勢いだ。アメリカから圧力を受けても、EUはファーウェイ製品の使用を禁止しなかった。イギリスやドイツも、国内の5Gネットワーク構築から同社を排除しそうにもない(2019年現在)。
なぜか。欧州では既に多くの国が、4Gネットワークでファーウェイ製品を使っているからだ。いまさら乗り換えればコストがかさむだけだ。
アメリカは特にドイツの動きを懸念している。ファーウェイ製品を採用したら情報活動の成果を共有させないという脅しもかけてきた。「欧州は戦場であり、とりわけドイツは主戦場」とファーウェイ考えるからだ。
しかしアメリカ政府は、ファーウェイ採用に伴うリスクを同盟諸国にうまく説明できていない。各国首脳に対するトランプの暴言・放言も問題をこじらせている。
トランプ政権はファーウェイ製品が中国の情報活動に一役買っていると主張しながら、まだその証拠を公に示したことがない。同盟国に内々で証拠を示した形跡もない。
やむなく米情報当局は、次世代通信網をファーウェイが支配する事態を想定した対策を練り始めた。「信用できない技術を含む複雑なネットワーク内でもリスクを管理できる体制。その構築が5Gの世界では必須になる」。国家情報長官主席代理のスーザン・ゴードンはそう述べた。「汚いネットワークの存在を前提にすべきだ」。
しかしファーウェイ側は、アメリカ政府の非難は不当だと反論。創業者の任は、企業の独立性を守るためなら情報収集に関する中国政府の要請も拒否すると断言している。
司法当局の要請に応えるため、電話などの通信網には通常、何らかの盗聴機能が備わっている。各国の情報機関も、そこに目をつけて盗聴したデータを盗んだりしてきた。つまり、国際科学研究所の上級研究員ニコラス・ウィーバーが言うように「通信インフラ自体が盗聴をサポートするようにできている」のだから、中国製の機器を使うのは中国の諜報機関を招き入れるに等しいのかもしれない。
ファーウェイ米国法人のセキュリティー責任者アンディー・パーディーは筆者らに、エドワード・スノーデンがアメリカ政府の情報収集活動の実態を暴き、アメリカ企業が諜報機関への協力を強いられてきた事実が明らかになって以来、通信業界は政府を信用しなくなったと指摘した。「アメリカがやっているように、中国政府も中国企業を、たとえ民間企業でも利用するはずだと、アメリカ政府は思い込んでいる」とパーディーは言う。
トランプが「5Gで後れを取るな」とTwitterで米企業を叱咤することも、ファーウェイは余裕で聞き流す。輪番会長の郭平(クオピン)は言ったものだ。5Gに関してアメリカが遅れているというトランプの発言は明快かつ正確だと。
今やファーウェイは最先端の通信ネットワークにおける技術標準を築きつつあり、今後は莫大なライセンス料が転がり込むことだろう。5Gへの移行を急ぐ世界中の国々で、この会社は優位に立てるはずだ。
「世界標準を定めたものが高いシェアを得るのは当然の流れ」だとスウェーデン国際問題研究所のルーリヒは言う。現にアジアやアフリカ、中東などではファーウェイが支配的な地位にある。「中国は開発途上国を通じて、自国の技術標準を国際化しつつある」
実際、いくらアメリカが排除に動いてもファーウェイの存在感は増すばかりだ。マレーシア、さらにはタイも5Gにはファーウェイを検討中だ。ヨーロッパでもNATO加盟国のスペイン、ポルトガル、イタリアなどが検討中。ドイツとイギリスも全面排除には消極的だ(2019年5月現在)。
思えば1840年のアヘン戦争以来、中国は欧米に屈服し、ひたすら欧米の科学技術を受け入れてきた。しかし歴史を振り返れば、近代以前の中国は西洋文明に先んじていた。そして21世紀の今、中国は再び過去の栄光を取り戻そうとしているのかもしれない。終わり
う~ん、中国の戦闘力の高さは分かった。過去の栄光を取り戻したいのか。このままだと朝貢文化が復活するのか。この戦いに日本は出てこないのか。ファーウェイ等中国企業は追っかけて行こうと思うので宜しくお願いします。
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