北海道公立高校入試[数学2019]

9月10日、北海道の中学生が一斉に受けるA模試がありました(2020年)。受験校を決定する資料となる試験です。私が担当している生徒の伸び方がえげつなかったので驚きました。今年はコロナの影響で学校が休みの日が多かったのですが、その間勉強していたとのことです。完全に志望校の標準を超えた成績でした(5教科合計240点)。今年の成績は二極化する予感がします。できる子は例年よりすごいです。できない子は例年よりできないです。要はコロナ休みのとき、勉強したかどうかです。休みをチャンスととらえて勉強できたか。これは社会人になっても同じです。できる人は時間を見つけたらスキルアップのため勉強しています。

1.「次の問いに答えなさい」

ここは例年通り超激安問題。一問でも落としたら致命傷となります。難しい問題で落としても痛手が小さい状態にするためには、このような簡単な問題では絶対に落としてはいけません。試験終了5分前に必ず見直しをしてください。

 問1 「(1)~(3)の計算をしなさい」

   単純すぎる計算問題。ちなみに(3)の(√6×√2)-√3の計算は

 (√12)-√3とすると面倒なので、√6を先に素因数分解して(√2×√3×√2)ー√3とすると楽です。2√3-√3-=√3となります。

 問2「4(2a+b)+(a-2b)を計算しなさい。」 

 展開。独立問題にする意味が分からんくらい簡単。工夫して楽な計算の仕方があるのでしょうか。

 問3 「関数y=2x+1について、Xの変域が1≦X≦4のとき、yの変域を求めなさい。」

変域。Xの値を代入するだけですが、その理屈はきちんと理解することが必要です。一次関数y=2x+1は傾きが+なので右上がりの直線になります。よってXが増加するとYも増加します。よって、Xの変域が1のときyの変域も最小となります。Xの変域が4のときyの変域は最大となります。

変域の意味は確認しておきましょう。

 問4「下の資料は、A中学校の生徒15人が上体起こしを30秒間行ったときのそれぞれの回数を記録したものです。最頻値を求めなさい。」 

 毎年出題代表値。今年は最頻値。数え間違いだけに注意。同じ数字は同じ印〇とかをつけると視覚的に分かりやすいですよ。

  最頻値は代表値の一つです。例年このような単純なものばかりでしたが、2020年度では裁量問題でも出題されました。最頻値、平均値、中央値の理解は現代社会でますます重要となっていることにかんがみて、裁量問題でも出題されたのだと思います。クラスの成績もそうだと思いますが、出来る人と出来ない人の差が大きくなり二極化していますね。このような場合、平均値をとっても、その属性の特徴をうまくとらえることができません(例えば3人の成績が100点、100点、0点だった場合、平均は66点となるのです。0点の人は平均が低いと安心するでしょうが、実際は0点の人以外は100点なのです)。そこで平均値の代わりに、最頻値であったり、中央値であったりの別の代表値が必要となるのです。ここはたくさん問題を解いて自信を持てるよう気合をいれてやるところです。

 問5「次の長さを3辺とする三角形のうち、直角三角形をア~オから2つ選びなさい」 

毎年出題の三平方の定理。しかし、2021年度はコロナの影響で外れました。数学の花形である三平方の定理が外れるとは。試験に出なくてもきちんと勉強しておくべきとこ。高校数学でも当然使いますね。

 一番大きい数字が斜辺になるので、残りの二つの数字を二乗して斜辺の二乗と等しくなるか確認するだけの作業です。

 問6「下の図のような5つの直線があります。直線ℓmñが平行であるとき、xの値を求めなさい。」 

 平行線と線分の比はこのような単純な問題だけでなく、裁量問題での応用でも良く出題されるところなので活用できることが大切です。


2.「次の問いに答えなさい。」

 引き続き、簡単な問題が続きます。

 問1 「2X二乗-18」

  単純すぎる因数分解。ちなみに因数分解とは和差の多項式を積の形にするものです。因数分する理由はなんでしょうかね。まず考えられるのは、因数分解することでXの値を求めるのが簡単になることですね。

 問2 「右の図のような3点ABCがあります。3点ABCから等しい距離にある点Pを、定規とコンパスを使って作図しなさい。ただし、点を示す記号Pを書き入れ、作図に用いた線は消さないこと。」

 垂直二等分線を書くだけ。この年までは作図も単純でしたね。しかしあまりにも簡単すぎて差がつかなかったのか2020年度の作図は少し難易度が上がりました。分度器を使わずに30度をとるというものです。そのためには正三角形の一角が60度とピンとこなければなりません。60度の二等分線が30度となるからです。市販の参考書を見たら載ってますね、同じ問題。学校ワークにも載っていると思います。ということは普通に勉強している人はできたかな。来年は45度をとらせるかも。これは垂線(90度)を書いて、その角の二等分線となりますね。

 問3「下の図のように、2,4,6,8,の数字を書いた4個のボールがあります。この4個のボーを袋に入れ、袋の中から、2個のボールを1個ずつ、もとにもどさずに取り出します。1個目のボールを10の位、2個目のボールを1の位として、二けたの整数を作るとき、この整数が4の倍数である確率を求めなさい。」 

単純な確率。ポイントは「もとにもどさずに」という点です。もとに戻すか戻さないかで場合の数が異なるので確率は変わりますので。だから確率の問題ではもとに戻すか否かはきちんと確認してくださいね。本問でもとに戻さないときの場合の数は12通りですが、もとに戻すときの場合の数は16通りになります。あとは本問では4の倍数だから二けた目が4か8を選ぶだけ。

 問4 「右の図のように、底面の半径が2㎝、体積が24π㎤の円柱があります。子の円柱の高さを求めなさい。」

 柱の体積は底面積×高さです。やはり単純。ちなみに錐の体積は1/3×底面積×高さです。

3.「図1のように、9つのますの縦横斜めのどの列においても、1列に並んだ3つの数の和が等しくなるよう、異なる整数を1つずつ入れる遊びがあります。このような遊びについて次の問いに答えなさい。」

勝負はここからですね。やっと頭を使う問題領域に入ります。もっとも、問題文に書いてあるようにあくまでも遊びです。

 問1「この遊びでは、❶1列に並んだ3つの数の和は、❷どの列においても、❸9つあるます全体の中央のますに入っている数の3倍になります。このことを次のように説明するときア~ウに当てはまる単項式をそれぞれ書きなさい。」 

毎年、このような遊びそしてゲームみたいな問題が出題されます。とは言っても難易度はかなり低いゲームです。ただ、「単項式」というワードが出ているように数学ではこのようなワードの定義はきちんと覚えなければなりません。ぼんやりではいけないです。単項式とは数や文字についての乗法だけでつくられた式のことです。ポイントは「乗法だけ」という点です。ポイントに絞ってマーカーを引きましょう。ダラーとひたすら長くマーキングする人がいますが無意味です。ポイントに絞って引くのです。当然「乗法」が何なのか分からない人は参考書や教科書で調べることです。中一の最初に習いました。面倒くさがらずに調べて納得して覚えて進む、これの繰り返しです。これをやらなければ成績は伸びないし、やれば気付かぬうちにえげつないくらい成績は上がります。突然上がる時期がやってきます。単項式を理解したらついでに多項式も理解しておきましょう。

 問2「この遊びで、図2のように、ますの一部に整数が入っているとき、xyはそれぞれいくつになりますか。方程式をつくり、求めなさい。」 

問1でa=3bという公式を証明したのだから当然これを使って問2を考えるのが通常の数学的思考方法です(もっとも解説の通りここではa=3bを使わずに答えが出ますよね。)。XYよりむしろ中央のbの値を求めさせるの方が思考の連続性と応用力を問うのに適しているのではないかと思います。まず問題文にあるように1列に並んだ3つの数の和が等しいので適当に①x+b+2=-8+b+y これを整理してx-y=10

次に列に並んだ3つの数の和は中央のますに入っている数の3倍になりますので

②3b=C+x+y

③3b=C+6-8

 →3b=C-2

②を③に代入すると

④x+y=-2となります。

①と④の連立方程式を解けば答えはでます。



4.「下の図のように、2つの関数y=x2²①、y=1/3x²②のグラフがあります。②のグラフ上に点Aがあり、点Aのx座標を正の数とします。点Aを通り、y軸に平行な直線と①のグラフとの交点をBとし、点Aとy軸について対称な点をCとします。点Oは原点とします。次の問いに答えなさい。」


関数の問題

問1「点Aのx座標が2のとき、点Cの座標を求めなさい。」 

問題文にあるように点Cは「点AとY軸について対称」ですので、まずはAの座標を求めること。そうすればCが出ます。ちなみに「対称」の意味が理解できていないと解けないです。線対称と点対称は小学校のときに既に習っていますね。


 問2「点Bのx座標が6のとき、2点BCを通る直線の傾きを求めなさい。」 

ここでのポイントは「BのX座標が6」ならAのX座標も6であるということです。なぜなら、点ABはy軸に平行な線上にあるからです。そしてAのY座標は12です。

点Aが出れば点Cの座標も出るのです。つまり点Aを媒介させることで点Cの座標を出すことができるのです。問題文の「点AとY軸について対称」という部分にラインを引いている人は問題文の読み方が正しいです。何にもラインを引いていない人は注意です。問題文はヒントなのです。ヒントに気付けるかが数学です。問1と同じ考え方の問題なので問1ができない人はこの問2も出来ないし、問1ができる人は問2もできるというあまり意味のない問題なような気がします。問1はいらなかったのではと思うところです。



 問3「点Aのx座標をtとします。△ABCが直角二等辺三角形となるとき、tの値を求めなさい。」 

直角三角形なので三平方の定理かなと思った人は良い思考ですが、本問では三平方の定理は使いませんね。なぜなら、斜辺BCを求める必要はないからです。むしろ二等辺三角形であることが重要です、二等辺なのでAB=ACとなるのでtを使って座標を出し、二次方程式を解くだけです。

またAB=ACなので直線BCの傾きが1であることに気が付きそこから答えを導いた人、いいですね、センスあります。

本年度の関数問題は難しくなかったですね。完全に学校ワークレベルです。

ちなみに令和3年度入試の関数の問題も難しくなかったです。やはり学校ワークレベルでした。入試問題からメッセージが伝わりますね、「学校ワークをきちんとやれよ」。



5.「右の図のように、❶AB=AD ❷AD∦BC ❸角ABCが鋭角である台形ABCDがあります。対角線BD上に点Eを、角BAE=90度となるようにとります。次の問いに答えなさい。」

図形の問題。好きな人は好きだが嫌いな人は嫌い。好きな人はなぜ好きかというと、図形はあまり勉強していなくてもその場で考えたらできるし、正解を導いたときの快感ですかね。ちなみに問題文に「台形」とあるのでAD∦BC(平行)です。にもかかわらず問題文にはわざわざ「AD∦BC」と書いてあります。ということはAD∦BCが問題を解くうえで必ず必要になるということを表しています。

 問1「角ADB=20度 角BCD=100度のとき角BDCの大きさを求めなさい。」 

 AD∦BCより錯角は等しいので角ADB=20度なら角CBDも20度です。問題文に角BCD=100度とあるので残りのDの角度も出ますね。

 問2「頂点Aから辺BCに垂線を引き、対角線BD 、辺BCとの交点をそれぞれFG とします。このとき△ABF≡△ADEを証明しなさい。」 

合同の証明。良くあるパターンとして合同条件の2つは出来たが残り1つが分からないというパターン。その場合、証明できる2つ(ほとんどは問題文の事実を引っ張ってくるだけ)についてはその論理過程(自分の考えた道筋)を丁寧に書くことです。カッコつけて難しい言葉は使わなくてよいです。例えば、本問だと①問題文にAB=ADと書いてあるのでAB=ADである。②問題文にAB=ADと書いてあるので三角形ABDは二等辺三角形である。二等辺三角形は底角が等しいので角ABD=角ADEである。これだけできれば部分点で半分は採れます。残り一個の③の証明で躓く人も多いです。受験戦略上、少し考えてピンと来なかったらあきらめるのもありです。考えてもできないもんはできないです。②までで部分点を貰ったら、③を捨てて余った時間をケアレスミスのチェックに回すべきです。ただ③を捨てると言っても残りの角の証明をしなければならないというのは分かっているので問題文に残りの角を証明しなければならないと一言書いておくべきです。そして「残りの角も等しいので一辺とその両端の角がそれぞれ等しいので合同」とせっかく覚えた合同条件を書きます。ぎりぎりまで部分点を貰うのです。白紙だと点をあげることができないですが、このように思考過程を書いておけば点が来るのです。このしつこい1点があなたを志望校に導きます。本当です。

学校裁量問題

 従来だとこの辺りで難易度は上がった(思考型ゆえ)のですが、この年から随分易化しましたね。余裕で全問正解した人も少なくないはずです。

 問1「下の図のように、関数y=12/5x①上に点Aがあります。点Aのx座標を5とします。点Aからx軸に垂線を引き、x軸との交点をBとします。点Oは原点とします。次(1)(2)に答えなさい。」


原点を通る直線ですね。

 (1)「線分OAの長さを求めなさい。」

座標を求めて三平方の定理を使うだけです。ここは簡単。

    11の二乗→121

    12の二乗→144

    13の二乗→169

   くらい覚えておくとすぐ解けますね。

 (2)「❶線分AB上の点Cをとり、❷点Cを通り線分OAに垂直な直線と❸線分OAとの交点をDとします。❹AD=3となるとき、2点OCを通る直線の式を求めなさい。」

こういうのは数学が出来る人と出来ない人を分ける問題ですね。まず問題を正確に理解することです。問題文は短いですが、上記の通り❶~❹と情報は多いです。問題文には意味のないことは書きません。だからこれらの情報には何らかの意味があると思って良いです。

出来る人の思考方法はこうです。①OCを通るということは原点を通る直線だからY=aXのグラフだな。②ということはCの座標を求めないといけないな。、③Cは「線分AB上に」あるからX座標は5だ。あとY座標を求めるだけだな。④うーんどうやって求めるんだろ、そう言えば分からないときは問題文に戻れって言われたな。「線分OAに垂直」と書いてあるから三角形ACDは直角三角形だな。⑤とすると三平方の定理かな、でもCDの長さは分からないな。違う。⑥うん?三角形ACDも三角形AOBも直角三角形だな。形も似てるから相似か、二角が等しいな、相似だわ。⑦とすれば相似比でACの長さが分かるわ。⑧よっしゃ、これを使えばC座標でるわ、この問題もらった、合格が近付いたな、いえーい。むひょむひょむひょむひょ、、、

 問2「下の表H、A中学校のバスケットボール部員2、3年生24人の握力について調査しまとめたものです。次の(1)(2)(3)に答えなさい。)」 

代表値ですね。必ず毎年出題されます。なぜなら表やグラフを読むことは社会人として必須能力だからです。この年から裁量問題でも代表値が出題されるようになりました。2020年も裁量問題で出題されています。

この問題、本来なら階級値の欄は設けるべきではなく自分で考えさせるべきです。とても優しいというか甘いですね。今年は甘いです。ちなみにこの年の翌年の問題は全体的に難易度が上がりました。

 (1)「表から24人の握力の平均値を求めなさい。」

 平均値。小学校で習いましたね。きちんと単位㎏を忘れないように。それだけ。

 (2)「表のアイに当てはまる数を、それぞれ書きなさい。」

連立方程式の問題。アをX、イをYとして式を立てて解く。特に難しくはないですね。レベル的には裁量問題というより最初の̻̻四角Ⅰで出す問題ですね。

 (3)「後日、1年生6人の握力を調査し、表に加えたところ、❶6人の握力は同じ階級に入り、❷表から求めた30人の握力の平均値は29㎏でした。1年生6人が入った階級を次のように求めるとき、̻🔲に解答の続きを入れて、解答を完成させなさい。」

多少迷う問題です。平均値が29㎏の階級値を25㎏とするか、29㎏のまま計算するか迷うところです。解答欄に(階級値)×(度数)とあるからです。でも「~の合計は」とあるので29のまま計算すべきです。

ちなみに私は以下のように考えました。

6人の階級値をXと置いて平均値を求める式を定立するのです。

(720+6X)÷(24+6)=29㎏

X=25

 問題文の指示の意味が良く分からないときは、空白で提出するより自分なりの考えの道筋を書くべきです。部分点が来る可能性があります。これは上記で証明の所でも書いた通りです。




2022 北海道公立高校入試分析チーム

分析を通じて来年の試験を予測 まずは北海道公立高校入試問題 次は国立高等専門学校(こうせん) オンライン家庭教師 北海道大学大学院法学研究科卒

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