アメリカと中国の対立にどう対処するか

ここ10年、中国経済・軍事についてのニュースを聞かない日はありません。そして、米大統領選を直前にして米中の対立構造も鮮明になりました。私たちはどのように考えれば良いのでしょう。元外交官の河東哲夫氏の論文を参考にしてみましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 世の中は米中冷戦で持ち切りである。米ソ冷戦時のような大人げない世界大分断の時代に逆戻りというわけだ。

 だが米ソ冷戦時代に外交官人生を送った筆者にしてみりと、米中冷戦といわれてもしっくりこない。東欧などをしっかり抱え込んでいたソ連に比べると、中国の一対一路など、はかないもの。中国だけに経済と安全保障を依存している国は皆無だから「中国圏」といっても実は中国一国だけの話、ということになる。米中冷戦は世界を分断するというよりは中国をどう抑え込むかということなのだ。

 筆者にはアメリカの片棒を担ぎたい気持ちもある。中国に古臭い朝貢・冊封関係を強要されるのはごめんだし、日本を中国や香港と同じ専制体制にされるのはもっと困る。日本には中国のような強い政府を望む人もいるが、筆者は経済・言論あらゆる面での自由を選好する。「対立はいらない」「アメリカも覇権にしがみつくべきでない」という人もいるが、米中は聞く耳をもたないので、この対立をどう利用するか、どう対処するかを考えたほうがいい。

 確かに、西側と絡み合っている中国の経済は切り離せない。しかし世界を中国一色にされてしまわないよう、関係を適度に絞ることはできる。例えば、西側企業は工場を中国外に移転しても困ることはもはやない。サプライチェーンは付いてくる。といいながらも、最近の米政権の中国への出方にも、ついていききれないものを感じる。

 第一に、中国が南シナ海を埋め立て、軍事拠点を作るのを看過しておいて今頃騒ぎ立ててもおそいのではないか。トランプ大統領は中国たたきを選挙に使っているだけで、再選されれれば同盟諸国のほうに牙をむくだろうし、民主党のバイデン候補は副大統領時代、中国への融和姿勢の当事者だった。だから今アメリカの尻馬に乗って中国を叩いても大統領選後はその馬が消えてしまうのでは、と思ってしまうのだ。

 第二に、自由・民主主義・市場経済の世界を、専制政治と統制経済で脅かす中国から守ろうと呼びかけられても、今のアメリカは時にあまりにえげつなく、中国とさほど違って見えない。中国は現代の世界での付き合い方を知らない意味でKYだが、アメリカも同盟諸国の信と尊敬を失っていることに気が付かない意味でKYなのである。

 第三に、米中が武力対決に至ると日本は難しい立場に置かれる。中国が在中米軍や自衛隊の基地などをミサイルで攻撃してくるなどの冒険はしたくない。

 中国との関係はオール オア ナッシングではない。日本の安全、経済を脅かされないよう気を付けながら関係を進めるという、バランス、つまり綱渡りの話なのだ。経済については、中国で生産して海外に輸出するやり方はやめて(中国は有事にマスクの輸出を止めるような国だ)、先端技術の移出も米欧韓台と足並みをそろえて規制を敷くべきだ。そしてアメリカの対中制裁が連発されるなかで、制裁対象の中国企業と関係にある日本企業は、自分もアメリカに制裁されないよう気を付ける。

 安全保障面での日本にとっての試練は、尖閣諸島、台湾の防衛だ。そうほうについて日米(と台湾)は事前によく擦り合わせて、互いにできることとできないことをきちんと腑分けし、事が起きてから信頼関係が崩壊するのを予防しておかなければならない。

 中国はその硬直した官僚主義で早晩行き詰る気がしてならないが、米中冷戦、いや米中対決は日本にとって当面、米ソ冷戦とは全く異なるリアルな危険を提示する。不要な対決は避けながらも兜の紐はしっかり絞めてかからないといけないだろう。

2022 北海道公立高校入試分析チーム

分析を通じて来年の試験を予測 まずは北海道公立高校入試問題 次は国立高等専門学校(こうせん) オンライン家庭教師 北海道大学大学院法学研究科卒

0コメント

  • 1000 / 1000